大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和45年(ラ)1011号 決定

以上認定事実によれば、競売目的物件である土地建物は、整理会社の取締役間仁田弘の居住の用に供されているものであつて、整理会社の企業の維持に絶対必要ないしは極めて有益であるとは考えられず、又これなくしては整理会社の整理事務運営に重大な支障を来たすものともいえない。もともと右物件は、連帯債務者間仁田弘の所有であり、本件抵当権が設定されたのであるが、本件会社整理の申立の直前に至り突如として整理会社に譲渡されたのであつて、その後の使用状況からしても特に自己の住居に使用している本件土地建物のみを(本件記録によれば、間仁田弘は、本件土地建物以外にも多数の不動産を整理会社の債務の担保として提供していることが認められる。)整理会社に譲渡した合理的理由は見出せず、むしろ、抗告人の本件抵当権の実行を妨げるためではないかとも推測しえないではない。

つぎに競売手続の一時中止によつて競売手続の実施の遅延をきたしても、本件記録によれば、右競売物件の時価は、抗告人の抵当債権を充分弁済しうるものであることが認められるが(抗告人の抵当権は順位一番である)昭和四五年一二月六日以降累積してゆく日歩八銭二厘の割合による損害金は抵当権により担保されず、弁済を受けうる見込みは確実ではない。しかも抗告人は、その元利金につき昭和四三年一二月末日の弁済期到来後整理会社からその弁済は勿論、弁済に関する申出も一度も受けたこともなく、本件記録に編綴されている整理会社の負債整理案によるも総負債額よりして競売手続中止期間内に抗告人の元利金の弁済が確実になされる見込みがあるものと認めることはできず、また負債の整理の必ずしも着実に進捗しているものということはできない。

従つて本件競売手続を中止することにより抗告人の蒙るべき損害は、整理会社の整理手続を遂行するために競売申立人の忍受すべき犠牲の程度を超えるものといわねばならない。

してみれば、本件競売手続を中止することは、「債権者の一般の利益に適応し、且つ競売申立人に不当の損害を及ぼす虞」がないものと認められないから、本件競売手続を中止した原決定は不当である。

(石田哲 小林定 岡垣学)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!